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2014. 01. 09  
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 カリラだった。まぎれもなく、この島ではカリラだった。
 フクイクたる麦の香りの奥に、不思議な郷愁を感じさせる強いピート臭。 常に潮風にさらされる中で蒸留されるアイラ島のシングルモルトにしかない、 この豊潤な潮の香りのするケムリ臭さ。 まさかここまで、ここまでこの島にピッタリ合うとは・・・。

 ジープ島に行く時は、何本かのシングルモルト(スコッチウイスキーの地酒)を必ず持参する。そして他の旅に出た時も、このモルトの銘柄を変えてキュッとやる事が多い。 これもいいけど、ん~、これもいけるよね。これまでは、まあそんな程度の感覚だった。でもいったいどれが一番その土地で旨いんだろうと?

 その延長で何の気なしに、ある日の上陸の際、ジープで「利き酒」のように飲み比べてみようと思いついた。
 まずは個性豊かなアイラ島から、カリラ、ラガブーリン、アードベック。そしてモルトの基本:ハイランド地方からは、クライヌリッシュ、アラン、ハイランドパークと。スペイサイド地方からは、マッカラン。ローランド地方からは、グレンキンチーと。この8本が揃えば、ほぼ全ての個性を網羅できる。

 それ以外にも、ジンやラムなどのスピリッツ系もこの島に合うので数本。 パーティ用にワインとシャンパン。 他のゲストの人達が持ってきたものを加えると、実に24本がテーブルの上に並んだ。 さながら、これはもう立派なBARだ。

 なんたってここにはマスターなんてものはいず、好き勝手に飲める。 しかも終電を気にせずエンドレスで。 更に、シングルだぁ、ダブルだぁとチマチマやるのではなく、ド~ンとボトルごとだ!
 潮風に吹かれながら、周りは360度の美しい海。 そして形のいい椰子の木。軽やかに短パンとTシャツで、足元はゴムぞうり。 波の音をBGMに、気が向いたらCDで好きな曲をそこにかぶせてみる。
 刻々と暮れなずむ夕暮。夜はキャンドルを囲んで、満天の星と天の川。 満月の頃は、海に美しく照り帰る「月の道」を眺めるのもいい。 目を閉じると、今日潜ったダイナミックな海のシーンしか浮かんでこない。
 これ以上のBARが、地球上に果たしてあるのだろうかと思う・・・。 そして数日たって、いろいろ飲んだ末の「カリラ」だったのだ。

 いつもはドングリの背比べが、まるで咲き誇る花の競演のように、味と主張が明確だった。 全てが美しく満ち足りた「地球」の中で、コンディションもイマジネーションもハイな状態で飲む時、 その味覚がナイフの切っ先のように研ぎ澄まされていくのだろう。 東京に戻ってきて飲んでも、 この島で飲んだ味の100分の1にも満たない。

 そして、普段は旨いと思って飲んでいる他のシングルモルトが裸足で逃げ出す程、 ここではカリラだった。 かぐわしいピート臭の潮の香りと高貴な透明さが奥深く、まるでこの島の海で生まれたかのように、すーっと全身に溶け込んでいく。
 酒は、その土地のものを飲むのが一番だ。 でもこの土地には、もちろん地酒など存在しない。 海しかない、海洋大自然のシンボルのような地。だから他の土地の酒でも、旅情的には何ら違和感がない。

 ただ、カリラの生まれたアイラ島とジープ島では大きさもそうだが、余りにもシチュエイションが違いすぎる。 真逆とも言える北のスコットランドと赤道直下というエリアの違い。でも接点はある。 小さな島で、常に潮風に晒されている事。時代の波から隔絶された土地というのもそうだ。 そして、ある意味での脱・高度経済&情報社会・・・。

 藤原新也氏の小説「ディングルの入江」がふと脳裏に浮かぶ。舞台はアイルランド。そしてこの小説で氏は、「島」について何かを語りたかったという。 この入江からほど近い所にある無人島が、この小説のテーマなのだ。島・・・。確かにそれは、 何か人間の根源にかかわる深いテーマが隠されている気がする。

 ここで語られている深遠なるテーマと、僕の中でのジープ島というテーマが、 細いけど確かな一本の線で結ばれていくような気もしてくる。 しかもアイラ島はまさにこのアイルランドにほど近い位置にある小さな島。 小説のテーマになった島のイメージに近い。 アイラとジープ。最北のヨーロッパの島と南太平洋の島。 それが自分の中で、「確かな線の形」となるのはもう少し先の事だと思うが・・・。
 ただ、この北の地方で頑固一徹に職人が誠心誠意を込めて造り上げた琥珀色の「天使の液体」が、 この南の島と見事に調和した事は、少なくとも僕の中では確かな事だ。

 旅とは点と点を線で結んでいく事。 それが、「不確かな今」を生きる人間にとって、自らの勘と行動力だけを頼りにしながら、 ささやかながらも自分の確かな哲学と行動規範を創っていく源なのだから。 しかも振り幅が大きいほど、それぞれの土地の意味性と魅力が増幅される。 それは陸の風景に飽きて、ダイブで海を潜った直後に感じる、今まで見えなかった「陸上の魅力の再発見」と似た感覚だ。

 アイラ島の暗い海、荒れすさんだ天候、厳しく移ろい行く季節、重厚で硬い石の文化、 勤勉で寡黙な人々・・・。 ジープ島にのめり込む程、その真逆の世界にも惹かれていくのは、 実はそういう事なのかもしれない。

 とあるライターが、 『良いBARには、硬質に結晶化した美しいほの暗がりの微粒子が漂っている気がしてならない』 と書いていたが、なるほど、アイラ的だ。
 それでは自分流でジープ的に、 『ここでは、青く結晶化した軽やかなイメージの素粒子が漂っている』 としてみよう。

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プロフィール

三輪アキラ

Author:三輪アキラ
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 JEEP島プロデューサーとして、この「究極の癒しの島」を、スタート時から17年の長きに渡ってプロモートし、日本中の人達に紹介している。
 専門は「旅」に関する広告関係を専門に扱うアートディレクター&アドバイザー。企画プランニング、写真撮影、文章、デザインから、印刷&web制作まで、幅広くトータルにクリエイティブのサポートをしている。

 元々、JTB&JRの宣伝を扱う広告代理店に所属していたのだが、独立して(有)ギルマンという広告プロダクションを設立し現在に至る。とにかく旅が好きで、海外旅は120回以上に及ぶ。
 特にダイビングはプロ級。27年以上のキャリアで2000本以上潜り、「海」を特に得意分野としている。

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