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2013. 12. 22  
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ここトラック環礁は世界一の沈船ダイブのメッカで、数多くの船が海の底で眠っている。ざっと数えても30隻以上。
 その中でも一番人気のダイブスポットは富士川丸だろう。ジープ島からボートでわずか15分で行けて、全長100m以上。船の原形をそっくりとどめ、水深も浅いこの船の雄姿は、『これぞ、沈船!』のひと事だ。人工物の遺跡がひっそりと原始の海の中で呼吸し、魚達の楽園と化している。まるで人類の過去の歴史や文明をも、全く別の世界観で飲み込んでしまったかのように・・・。

 びっしりと花開いたカラフルなソフトコーラルから、カゲロウのように魚達が沸き立ち、その上をバラクーダ、ギンガメアジ、カマスの群が渦を巻き、イソマグロ、カスミアジ、ツバメウオ等が悠然と泳ぎ去る。
 またここは、映画タイタニックの撮影にも使われるほど、世界で一番有名な沈船でもあるのだ。

 それにしても、色とりどりの種類、この数。海の生命の豊潤さをつくづく感じる。これだけの種が共存し、生命を維持している光景を見ると、地球上での「パラダイス」とは、全てこのシーンに凝縮されているのではと思える程だ。
 とある船室に入ってみた。そこはシンシンと静まりかえり、どこからともなく差し込む光の帯。人工物の中だけに、陸上との比較が浮き彫りになる。時間という概念すら、どこか空虚なものに感じてくる空間だ。ここは「時が止まった場所」なのかもしれない。  

 そして僕の一番好きな沈船にも触れてみよう。もちろん、近いポイントで五星丸やリオデジャネイロ、そして神国丸や山鬼山などもとてもいい沈船だ。ただ、かなり遠いのでなかなか行けないけど、マイフェバリットを一つ上げるとしたら、やはり「フミツキ」だろう。貨物船がほとんどの中で、これだけは唯一の駆逐艦。シャープな船体。トップで35m、ボトムで50m。それほどの大深度ではないが、やはりディープだ。そしてここに初めて入った時の感動とシーンは、今でもくっきりと目に焼きついている。

 アンカーがかかり、ガイドからOKのサイン。ドーンとエントリーする。でもすぐには船体は見えない。青い世界を少しずつ下降するにしたがって、その全体像が幻のように見えてくる。ゾクゾクするような感触、非現実へのトリップ・・・。  
 
少しずつ少しずつ下降し甲板に着地する。黒い鉄の固まりの、原型を留めたままの船体。モノトーンの白いソフトコーラルがビッシリと付き、青いスズメダイが陽炎のように舞う。シーンと静まりかえった、得も言えぬ幻想性。極限的とも言える美しさ。

 静かに時を刻む海の底で、「人工物」という異物が、太古から変わらぬ「生命の海」とハーモニーを奏で、特殊な「場」を形成するかのように。そしてそれ自体、「終焉のメモリアル」として存在しているかのようだ。近未来の「終末」を描いたSF映画のシーンを、もっとリアルに生で感じるかのように。例えば、「ザ・ウォーカー」や「ザ・ロード」のような・・・。
 さあ、ゆっくりと見て回ろう。

 それほど青い世界ではない。ただ不思議とにごりを感じさせない空間に、生命の花が至る所に咲いている。ス~っとウメイロの群れが横切り、色彩の旋律を奏で演目の幕を開ける。静かで、そして観客のいない、ここは小さな劇場。それはどの舞台よりも美しいステージに見えてくる。

 真っ暗な船室の中を覗くと、10坪ぐらいの空間であろうか。反対側に光が漏れている。恐る恐る中に入り、光の照明の映し出すささやかな舞台の一幕に我を忘れて見入ってしまう。テンジクダイの群れが、その光のビームの中で静かに舞っている。光と影の恐ろしく強度の強い演出だ。
 生命に残された最後の本能があるとしたら、光のあたる中で自らの姿をパントマイムのようにくっきりと浮かびあがらせることではないだろうか・・・。

 ・・・どのくらいたったのだろう。ふっと我に返ったのだが、それは一瞬だったのかもしれない。「見る事の原点」がそこにはあった。濃い大気の圧力と風と温度を感じながら、その身体性に基盤を置く「ライブの劇場」こそ、ダイビングにのめり込む要素であろう。アンダーグラウンドならず、アンダーウォーター。カウンターカルチャーとしての、確かな劇場がそこにはある。

 ここは海の中のコロッセウム。人知れず眠る遺跡。またいずれ潜りたいと思う。このシーンに再び会うために。

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phto by Hirosi-Sato
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プロフィール

三輪アキラ

Author:三輪アキラ
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 JEEP島プロデューサーとして、この「究極の癒しの島」を、スタート時から17年の長きに渡ってプロモートし、日本中の人達に紹介している。
 専門は「旅」に関する広告関係を専門に扱うアートディレクター&アドバイザー。企画プランニング、写真撮影、文章、デザインから、印刷&web制作まで、幅広くトータルにクリエイティブのサポートをしている。

 元々、JTB&JRの宣伝を扱う広告代理店に所属していたのだが、独立して(有)ギルマンという広告プロダクションを設立し現在に至る。とにかく旅が好きで、海外旅は120回以上に及ぶ。
 特にダイビングはプロ級。27年以上のキャリアで2000本以上潜り、「海」を特に得意分野としている。

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