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2013. 10. 22  
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 ここでの旅生活の楽しみの一つが、「月の光」に優しく包まれること。オトギの国のように小さいこの島では、回りを遮るものがなく、360度、全天で行われている全ての光景が見渡せる。太陽の支配する日中が終われば、次に登場するのは月であり星達だ。
 そしてとりわけ印象的なのは、約30日に1度訪れる満月の日。太陽にも劣らぬ強靭で内照的な光は、島と海をその温度を持たない不思議な冷光で包み込む。 「夜」とは決して暗い世界ではなく、昼と同じぐらい生命力のある光に晒されるのだった。
 僕が「夢雲(moon)」とハンドルネームを持ち、何故これ程までに月に魅せられるようになったのか? それは今から17年前、忘れもしないとある南の島での出来事が発端だった・・・。

 その日、ジープ島のあるトラック諸島よりは遥か西に位置するインドネシア・ボルネオの、とある小島にいた。そこで遭遇した出来事が、月の神秘的で不思議な力を知るキッカケとなったのだ。
 その島はジープ島よりもはるかに大きく、一周30分くらいで中はジャングル、海亀がひんぱんに産卵にやってくる島でもある。ボートでちょっと沖合に出ると、マンタ(巨大エイ)がガンガンやってくるポイントがあり、毎日海に入り、彼らのダイナミックで優雅な姿を見て過ごした。

 とある日、昨日とは全く違う雰囲気があたりを支配し始めた。非常に強い潮の流れが出てきて、不思議な胸騒ぎのような感触。水面にザワザワと小魚達が集まり、タカサゴ等の中型の魚も交り、バシャバシャと跳ねている。はじけるような音と強い流圧の中で、吹き飛ばされないよう岩にしがみつき、ダイバーとしての本能が、自らの眼をそこへクギづけにした。
 するとまもなく巨大なマンタが1匹、、来たと思ったらすぐに向こうからも1匹、2匹。。いや、こっちからも・・・。
 次々と彼等は頭上を旋回し、小魚に交って乱舞する。視界の中だけでも7~8匹、ゆうに10匹以上いたかもしれない。流圧をこらえ、時々近づいたりしながらその狂気にも似た「過剰」な光景に見入っていた・・・。それは今でも夢に出てくる程の、エキサイティングで迫力のあるシーンだった。

 そして次の日も同じ情況を期待して行ってみたのだが、残念ながら何事もなかったかのように、そこはいつもどおりの静寂を取り戻していた。昨日はたまたまだったのだろうか? ただ滞在中、島は明るい満月に包まれ、不思議で美しい光の中で飲んだ酒の味が格別だったこと。そして、海亀が10匹以上も部屋の近くで産卵をしていた事が強く印象に残ったのだ。

 即刻日本に戻り、何かにとり憑かれたように「月」の事を調べるうちに、様々な月のメカニズムとパワーを知る事となった。月の引力が潮の満ち干きを生み出し、その水のカクハンによって生命が誕生し、その後も生物達にとって、とても重要な役割を担っている事。そして満月の日の2日後をピークに、サンゴや魚達が卵を生み、マンタのエサとなるプランクトンが大量に発生するという事も含め。
 スケジュールを振り返ってこよみを調べると、忘れもしない「あの日」、確かにそこは満月の日の2日後であった・・・。


 この時以来、その島に変わって通い続けているジープ島での旅生活。それは僕にとって常に月の存在と供にある。三日月から半月、そして満月へと毎日刻々と変わりゆく月の運行は、さしずめ自然界の暦(こよみ)のようなもの。
 太陽が一日をダイナミックに演出し、年間を通して大きな四季を生むとしたら、月は更に一年を12回の周期に分け、満月をピークとした全ての生命のバイオリズムをつかさどる。

 満月の夜。太陽が西の空に沈み、あたりを黄昏の朱に染め終わった後に、一瞬全天がコバルト色に変わる。その深い蒼の世界から、強いオレンジ色の光を放つ満月が東の水平線から昇り始める。
 一瞬、「パーン!」と弾ける様な音がしたかのように、水面に月の反射光が照り輝く。海に「月の道」ができる感動的なシーンだ。この太陽のような迫力で昇ってくるシュールな月は、他ではめったに見られないジープ島ならではのもの。
 そして満月が垂直に昇り、深夜真上にきたとき、天上から全てをその冷光で照らす。静寂の中にくっきりとヤシの葉が影を落とし、驚くべき明るさだ。光が心の中にまで届いてくるような不思議な感覚。

 「太陽が外界の外側を照らす光なら、月は心の内側を照らす光」。

 ずっと古代より、生物達はその日がくるのを楽しみに待っているはずだ。いつもは太陽の陰に隠れている月。でもこの日だけは、太陽が沈むと同時に昇り始め、その光だけで世界を晴らす、全天の主役を張る時。 天空から夜を照らし、30日に一度の周期で別世界を表出する、「ハレ」という自然界の祝祭日・・・。

 今宵ビーチで月と向きあい、ゆっくりと杯を傾けよう。不思議な冷光の中で心を浮遊させてみるのもいい。するとどこか別の世界へ飛んでいけるかもしれない。 そして静かなる「祭り」を楽しんだ後、安らかな眠りに落ちていくだろう。

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プロフィール

三輪アキラ

Author:三輪アキラ
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 JEEP島プロデューサーとして、この「究極の癒しの島」を、スタート時から17年の長きに渡ってプロモートし、日本中の人達に紹介している。
 専門は「旅」に関する広告関係を専門に扱うアートディレクター&アドバイザー。企画プランニング、写真撮影、文章、デザインから、印刷&web制作まで、幅広くトータルにクリエイティブのサポートをしている。

 元々、JTB&JRの宣伝を扱う広告代理店に所属していたのだが、独立して(有)ギルマンという広告プロダクションを設立し現在に至る。とにかく旅が好きで、海外旅は120回以上に及ぶ。
 特にダイビングはプロ級。27年以上のキャリアで2000本以上潜り、「海」を特に得意分野としている。

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